Appleは「iPhone 9」という機種を発売していません。
Appleが「iPhone 9」を飛ばす決断をした理由と、Appleの製品名戦略の歴史について、Appleに詳しいYouTubeチャンネル「Apple Explained」が解説しています。
*Category:テクノロジー Technology|*Source:Apple Explained ,wikipedia
Appleが新しいiPhoneに「iPhone 9」と名付けなかった理由とは?
Appleは「iPhone 8」の次に「iPhone X」を発売しました。しかし、この「iPhone X」という名称には、いくつかの疑問が残ります。
それは、なぜAppleが命名法則を無視して「iPhone 9」を飛ばしたのかという点と、なぜ読み方が「テン」なのにも関わらず表記が「X」なのかという点です。
なぜ命名法則を変えたかというと、Appleは分析的な推論よりも、魅力的なマーケティングを優先しているからです。
例えばAppleは、明らかにテレビではないにも関わらず「Apple TV」という製品名を付けています。これについてAppleは、「Apple TV」と名付けた方が、響きがカッコいいという理由で、そのように名付けたと話していました。
そして、このAppleのネーミングの傾向は、iPodやApple Pencilの名前にも影響を与えています。人々は音楽プレーヤーを「pod」と呼んだり、スタイラスを「Pencil」とは呼びません。つまり、名前だけを見た場合、誤った解釈をされる場合があるということです。
大まかには、「iPhone X」という名称になったのもこれと同じ理由です。まず、なぜ「X」なのかという理由について「Apple Explained」は、Appleには「Mac OS X」という前例があったことを挙げています。
まず、2017年のiPhoneの発売には、他のモデルにはない意義がありました。それは、iPhone発売から10周年という記念日だったという点です。
初代iPhoneは2007年に発売されたため、Appleは2017年にこの機会を記念する必要があると感じていました。そして「iPhone X」はデバイスの歴史において完全に新しい時代を象徴するものでした。
なぜなら「iPhone X」は、iPhone史上最もデザインが大きく変わり、本体価格も2016年に発売された「iPhone 7」の650ドル(約8万2千円)から1,000ドル(約12万円)と大幅に値上げをしたからです。
つまり「iPhone X」のリリースは、定期的なアップデートではなく、大きなアップデートだということです。
そしてAppleは「iPhone X」の発売を大々的に宣伝したいと考えていました。そのためAppleは、伝統を破り、9という数字を避けて「iPhone X」と名付けました。
そして、AppleがこれまでiPhoneにローマ数字を使ったことがなかったにもかかわらず、「エックス」と誤読される可能性が高いことを承知の上で、ローマ数字の「X」を使った理由でもあります。
ただ、Appleにとって「10」と呼ばれるか「エックス」と呼ばれるかは、重要なことではなかったのかもしれません。なぜなら、Appleは、2017年のiPhoneが、これまでのAppleの製品とはまったく異なるものであり、大きなアップデートをしたことを伝えることが最優先だったからです。
一方、「iPhone 9」と名付けた場合は、Appleの意図を伝える上でそれほど効果的ではなかったはずです。
Appleは「iPhone 8」から「iPhone X」、そして「11」へと移行しましたが、それでも人々は「iPhone 9」という名前を使うことを期待していました。
2019年の終わりから2020年の初めにかけて「iPhone 9」登場の噂が定期的に流れたのはそのためです。
Appleが新しい廉価版iPhoneの製造に取り組んだ時、その名称はまだわかっていませんでした。このモデルは「iPhone SE」の新モデルでしたが、ほとんどの人は、この廉価モデルを「iPhone 9」と呼んでいました。
そのため、Appleが新しい廉価版iPhoneを「iPhone SE」と発表した時、多くの人が驚きました。
しかし、Appleが新しい400ドル(約5万円)のiPhoneをSEと呼ぶことは、マーケティングの観点から見ても、正しい判断です。もし、このタイミングで「iPhone 9」が発売されていたら、iPhoneシリーズに大きな混乱を与えていたはずです。
なぜなら「iPhone 9」という名前だった場合、このモデルは「8」と「10」の間に発売された機種だという印象を与えてしまうからです。
つまり、発売して間もない機種にもかかわらず、ユーザーの頭の中では数年前のモデルだと思われてしまう可能性があるということです。
さらに、AppleはよりプレミアムなiPhoneのモデルに数字を使います。しかし、SEはプレミアムモデルではなく「8」「10」「11」とは全く異なる市場にアピールすることを目的とした格安モデルです。
また、AppleがiPhoneの歴史の中で飛ばした数字は「9」だけではありません。2007年まで遡ると、初代iPhoneが発売されて、その後「iPhone 3G」「3GS」「4」と続きました。
つまり、「iPhone 2」や「iPhone 3」は存在していないのです。3Gという名称は、キャリアが提供する高速な3Gネットワークで動作するデバイスということを意味しています。よって「iPhone 3」ではありません。
AppleがiPhoneに連続した数字の名前を採用したのは「4」になってからです。
第3世代モデルが3GSと呼ばれたのは、本当に偶然の一致ということです。ただ、これはiPhoneの歴史の中で、今後何年も議論され続けるであろう、Appleの興味深い命名規則を象徴付ける出来事の1つです。
Source: appbank