19世紀の難破船から発見された男性用ジーンズが、オークションで95,000ドル(約1300万円)という破格の値段で落札されています。
一見ボロボロのこのジーンズがなぜ、これだけの高価格で落札されたのでしょうか?ジーンズに秘められた歴史について、テック系メディア「Ars Technica」が説明しています。
*Category:テクノロジー Technology *Source:Ars Technica ,holabirdamericana.com
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沈没した「金の船」から発見された世界最古のジーンズ
オークション会社の説明によると、このジーンズは、1850年代にリーバイ・ストラウス社によって作られた、最も古いワークパンツであるとのこと。このジーンズは、1857年9月にハリケーンに見舞われたカロライナ沿岸のSSセントラル・アメリカ号とともに沈没したもので、発見時の環境のおかげで、保存状態が極めて良好だったそうです。
SSセントラル・アメリカ号は、1850年代に中米とアメリカ東海岸を結んでいた全長280フィートの蒸気船です。同船は沈没時、587人の乗客と乗組員を乗せていました。また積荷の中には、1857年に鋳造されたばかりのダブルイーグルコインや古い金貨、インゴット(金塊)などが含まれており「金の船」と呼ばれていたそうです。
しかし、1857年9月9日にハリケーンに襲われ、船の帆がズタズタに。その2日後には船に水が入り、パドルホイールとボイラーが故障しました。蒸気圧の急激な低下でビルジポンプも停止したため、乗客・乗員はバケツリレーで懸命に増水を食い止めたそうです。海は一時的に凪いだものの、ボイラーを再稼働させることはできず、やがてハリケーンが再び勢いよく襲ってきました。
9月12日の朝、近くにいた2隻の船がSSセントラル・アメリカ号を発見し、女性や子供を中心とした乗客153人を救命ボートに乗せて救助されました。しかし強風が続き船は離され、午後8時に船は沈没。乗員乗客425人が死亡しています。
なおこの沈没事故は、1857年の大恐慌の原因ともなっています。当時、ニューヨークの銀行が破綻寸前で、現金の流入を強く望んでいたが、この船の沈没により実現しなかったのです。
1988年、トレジャーハンターのトミー・グレゴリー・トンプソンが遠征隊を率いて沈没船を発見し、遠隔操作車(ROV)を使って金塊やその他の遺物を回収するまで、セントラル・アメリカ号は海底に沈んだままでした。回収された金塊は1億ドルから1億5000万ドルと評価され、最大のものは「ユーレカ」と呼ばれる約36キログラムの金塊で、2015年には800万ドル(約11億円)という記録的な値が付けられています。
この難破船から回収されたジーンズは、サンフランシスコの商人ジョン・ディメント氏のトランクから発見されました。リーバイスは1853年にサンフランシスコで乾物屋として創業しましたが、今も有名なリーバイスのデザインは、1873年まで特許を取得していません。
しかし、オークション会社によれば、このジーンズはスタイル、形、ボタンの大きさなどのほとんどの点で、他の古いリーバイスとほとんど同じだそう。これまで最古のリーバイスは、廃坑で発見された1880年代のもので、今年初めにオークションで87,400ドル(約1200万円)で落札されています。これらの背景と「最古のリーバイス」としての価値を考えると、このジーンズに1300万円超の価値がつくのは頷ける話です。
Source: appbank